在宅で最期を迎えたい。看取りについて患者と家族の気持ちを楽にするために

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自分が死を迎える時、どのような死を迎えたいか考えたことがありますか?

例えば、最期は誰と一緒にいたいとか、最期は家で迎えたいとか病院がいいとか、考えたことがあるでしょうか。

私は看護師として働いています。職業柄、人が最期を迎える時に立ち会うことも多いです。その時毎回思うのが「その人はその人の希望する最期を迎えられたのだろうか?」ということです。

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理想的な人生最期の迎え方

私が働いている病棟では、入院と同時に退院後についての患者さん本人の思いを確認します。

なぜなら、病気によっては命の時間に限りがある患者さんも多いからです。

もしも治療が限界にきたら…そしてこれ以上治療ができなくなったら。

その先の残りの時間をどのように過ごしたいか、その人がその人らしく最期を迎えるために確認しておく必要があるのです。

私が担当した患者Aさんのケース

私が担当した患者さんのAさん。入院してきた時、末期の肺ガンでした。Aさんは、肺ガンの診断を受けた後、手術や抗ガン剤治療を続けてきました。

しかし、治療の効果は得られず、全身に転移したガンの痛みがありました。Aさんの入院は治療の目的ではなく、その痛みを緩和させるための入院でした。

Aさんは入院したその日から、皮膚に貼るタイプの麻薬の使用を開始しました。麻薬の効果はすぐに現れ、入院してきた時苦痛に歪んでいたAさんの表情は、みるみる穏やかになっていきました。

入院前には痛みで摂れなかった食事も、少しずつ摂れるようになり、悪い状態ながらも安定していきました。

Aさんの希望した最期と家族の葛藤

担当していた私は状態が安定してきたAさんに、残された時間をどのように過ごしたいかたずねました。

するとAさんは少し伏し目がちに「家がいいな。でも、こんなんで家に帰っても主人や子供たちに迷惑かけるだけだわね」と言いました。

私は、家に帰りたいと望むAさんの希望を叶えるために、ご主人や二人のお子さんと面談を行なっていくことにしました。

二人のお子さんはそれぞれ家庭があり、Aさんはご主人と二人暮らしでした。お子さん達は高齢のお父さんと、病気のお母さんが二人で暮らすことに不安を抱えていました。

最初の面談でAさんのお子さんたちは「お母さんの望むようにしてあげたい、でも自分たちにも生活があり、ずっとついていてはあげられない。家で過ごすのは無理だと思う」それがお子さんたちの思いでした。

Aさんの思いを叶えるために

Aさんは私によく若い頃の話を聞かせてくれました。ご主人との出会いや子供たちを育ててきた日々。まるで自分の人生を振り返るかのように、夢中で話すのです。

そして思い返せば思い返すほど、自宅へ帰りたい思いは強くなっていきました。私はAさんの思いを叶えるため、他の職種にも協力を依頼しようと考えました。

医療ソーシャルワーカー、心理士、理学療法士、主治医、看護師による多職種カンファレンスを実施することにしました。

・医療ソーシャルワーカー

食事や洗濯などの生活全般をフォローするため、訪問介護や訪問看護などの利用プランを考えます。

・心理士

患者さんやその家族の思いをしっかりフォローするため思いを聞きながら対応していきます。

・理学療法士

必要に応じた患者さんの訓練と、動きに応じて自宅で生活するために、自宅の改修などの提案も行います。

・主治医

患者さんが痛みを感じることなく生活できるだけの、痛みのコントロールや体調管理をしていきます。

上記のメンバーでAさんを自宅に帰すための方法について話し合っていきました。お子さんたちの一番の心配は、高齢のお父さんと病気のAさんを二人にすることでした。

Aさんの夫は「あれが家に帰りたいと言うのなら連れて帰ってやりたい…でも私一人では面倒はみれないしね」と言っていました。

Aさんのお子さんたちは、もし父母二人だけの時に、母であるAさんの痛みが強くなったらどうすればいいのか、もし、父母二人だけの時に急に具合が悪くなったらどうすればいいのか。

高齢のお父さんでは対応できないと不安を持っていたのです。

がんの患者さんが在宅で療養するには何が必要か?

そこで私と医療ソーシャルワーカーは、ヘルパーや訪問看護をフルに使うことを考えました。Aさん夫婦が二人で過ごす時間を大切にしながら、訪問する時間をこまめに決めていきます。

まずは看護師と、ヘルパーの介入サービスを利用しようと考えました。昼間はヘルパーさんに、食事や身の回りの世話などの生活の介助を中心に、介助をお願いします。

痛みなどの症状に対する麻薬のコントロールや全身状態の観察は、訪問看護師に行なってもらいます。

症状に変化があれば主治医に報告し点滴などの指示をもらい、自宅で実施します。

また、必要があれば主治医はAさんの自宅へ往診に行くこともできます。心理士はAさんの思いもお子さんたちの不安にも、その都度耳を傾けてくれます。

主治医や訪問看護師へ伝え対応することができるよう、入院中からAさんの病室を訪ね顔見知りになってもらいました。

理学療法士にはAさんの動きに合わせた手すりの設置などを提案してもらうために、家屋調査にも行ってもらうことにしました。

在宅へ向けて挑戦した外泊

私たちはAさんの在宅生活にむけて、他職種それぞれが提案できるプランを持ち寄りながら、カンファレンスを繰り返しました。

また、私たちが話し合った案は、Aさんの家族にもわかりやすく説明していきました。

様々なサービスを利用することを提案したことで、Aさんのお子さんたちの不安も、少しずつ解消されていったようでした。

そしてついに試験外泊の日程を決めることができたのです。自宅まで帰るための介護タクシー、自宅で横になるためのベッドは、医療ソーシャルワーカーが手配してくれました。

訪問看護師も2泊の日程に合わせ訪問スケジュールを調整してくれました。

定期の麻薬と突然の痛みに使える麻薬も持って帰るよう準備しました。そして何かわからないことや、困ったことがあれば、すぐ病院に帰ってきていいことも説明し、Aさんを送り出しました。

自宅に向かうAさんの表情はにこやかで、本当に嬉しそうでした。外泊中は子供たちやその孫、自分の姉妹が自宅に大勢集まってくれたそうです。

大きな痛みも時折あったそうですが、痛み止めの麻薬を服用し楽に過ごせたそうです。外泊を終え病院に帰ってきたAさんの表情はとても穏やかで、自宅での様子を嬉しそうに話してくれました。

でも…。Aさんのその後

AさんもAさんの家族も、外泊ができたことで、在宅で生活することへの不安も軽減したようでした。「訪問看護師さんがきてくれれば安心」など、様々なサービスを使用すればAさん夫婦が在宅で過ごせると感じていたようでした。

しかし、その後Aさんは自宅に帰ることはありませんでした。結局、Aさん家族の不安をすべて解消することはできなかったのだと思います。

Aさんの家族は「家で生活できるかもしれないけど…でも。」と言いました。

何度も何度も面談を繰り返しましたが「でも」という言葉は頻回に聞かれました。

Aさんの自宅に帰るという思いは叶えられず、Aさんは数ヶ月の入院療養を経て、病院で最期を迎えました。

Aさんが亡くなり、私はAさんの思いを叶えてあげられなかった自分の非力さを痛感しました。

Aさんはが亡くなった日、帰りの車内で大泣きしたことを今でも忘れられません。

Aさんとの経験から考えたことは、退院前に連泊の外泊回数を増やし自信を持たせることや、在宅療養中の患者家族間の情報交換などを実施することも必要だということです。

また家族が介護をすべて負担する必要はありません。

サービスを利用することで、患者さんと残された時間を有意義に過ごすことができます。

家族に在宅看取りの意味をもっと明確に伝えていく必要があるのだと思います。

この記事を通して看取りを迎える患者さんやそのご家族のお役にたてれば幸いです。

この記事をかいたのは:にいねえ

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