フィンランド介護事情!ドクターヘリ出動で老人が戦争パニック!?

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皆さんはドクターヘリというものをご存知でしょうか?

簡単に紹介させていただくと、救急車のように緊急な応急処置が必要な患者の元にヘリコプターで駆けつけるのがクターヘリです。

ドクターヘリを必要とする人は、ドクターヘリが駆けつけてから、すぐに処置をする必要のある重症患者。その為、ドクターヘリには名前のごとく「お医者さん」も乗っています。

近くに適切な処置ができる施設が無いなど、患者の早急な移動が必要なときも、渋滞無しで輸送できるドクターヘリが大活躍します。

私も老人介護施設での研修中に、一度だけこのドクターヘリを目の前で拝見させてもらいました。

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生まれて初めて見るドクターヘリに大興奮!

バタバタバタバタ…

研修中に、大きな音が廊下に響いて来たので、音のする方へ行ってみると、それはドクターヘリのプロペラの音でした。

私の研修現場の敷地の中庭に、黄色いドクターヘリが停まっていました。

フィンランドでもドクターヘリの出動は珍しいので、私以外人もたくさんの介護士たちが、何があったのだと集まってきました。

しかし、私たちの注意がドクターヘリに捕られている間に、介護施設内では老人たちがとんでもないことになっていたのです!

ドクターヘリを見に来た人たちでざわめく中、ふと後ろを振り返ると、何やら施設の室内も、ザワザワとしています。

手薄になったロビーから聞こえて来たのは、すすり泣くような声や低い唸り声でした。

「逃げて! やめて!」

その声はと言っているのが、わかりました。

これはただ事ではない!老人たちのパニック

私は、(もう少しだけ滅多にお目にかかれないドクターヘリの活躍を見ていたい…)とは思いましたが、そこは研修生という身分。そうもいきません。

やじ馬の介護士たちの間を縫って、施設のロビーに引き返します。

そこには、何とも言えない緊張感に包まれ、パニックを起こした老人たちがいました。

まず先ほど私の耳に入って来た低い声の主は、いつも和やかなおじいさん、Mさんでした。

しかし、この時ばかりは、その和やかな笑顔もなければ、優しい声もありません。Mさんは、誰に語るのでもなくただ、自身の体験した戦争について、一人でひたすらブツブツと話していました。

Mさんの横を見ると、傍に座っていたおばあちゃん、Hさんも体を前後に揺らし、怯えているように

『あ~、あ~』

と小さな声を出し続けています。

普段から介護の必要が無く、自分で歩くことのできるSさんは、私の姿を見ると怖い顔で近寄ってきました。私の腕を痛いくらい強く摘まむと、

「危ないから早く逃げなさい!」と言いました。

Sさんは、元保育士でとても温和な優しいおばあさんですが、この時はその面影も感じられませんでした。

固まってしまった私の傍に、他の介護士がやって来てSさんの手を私から離すと、Sさんに言いました。

「これはただのヘリコプターの音、戦争はとっくに終わっているのよ」

私も、お年寄りの皆さんはほとんどが戦争経験者なので、ヘリコプターの音でそれを思い出してしまったのかなとは感じていました。

そして、その介護士の言葉を聞いてやっぱり!と思いました。

しかし、ヘリコプターの音で蘇ってしまった恐怖は「私の想像をはるかに超えたショック」を老人たちに与えていたようです。

騒ぎに気が付いた介護士たちも続々と施設の中に戻ってきて、私たちは老人たちをなだめながら自分の部屋へと連れて行きました。

パニックに陥っていた老人たちも、自分の部屋に戻ると少しづつ落ち着きを取り戻しました。そしてみんな、疲れたようにベッドで寝てしまいました。

しかし中には、戻ってしまった記憶からなかなか抜け出せず、苦しい思いをする人もいました。

戦争経験を話していたMさん。

Mさんは、私が「大丈夫ですか」と声をかけても何の反応もせず、戦争の体験談を話し続けるだけです。

私は、先ほど看護師が言った『戦争はとっくに終わっている』という言葉を投げかけてみましたが、全く聞こえていないようでした。

すると、Sさんから私を救ってくれた同じ介護士が突然、Mさんの名前を呼びながらMさんを揺さぶりはじめました。

私は、こういう時はとにかく優しい言葉で安心させなければと思っていたので、その手荒な行為が理解できませんでした。

しかし、介護士に体を揺さぶられ名前を呼ばれ続けたMさんは、急に話すのをやめました。

そして何事もなかったように、いつもの穏やかな声で『なんだ?』と言いながら目の前の介護士の顔を見つめました。

一部始終を見届けて私は、先ほどMさんを揺さぶった行為は、【思考をずらすために、外から刺激を与えるため】だったのだと知りました。

Mさんが正気に戻るとその介護士は

「しっかり目を覚まさせてあげないと、かわいそうよ」

と、私に言いました。

しかし、Mさんよりもっと大変だったのは、私の腕を掴み逃げなさいと言ったSさんでした。

Sさん以外の人たちは、1時間もするとさっき起こったパニックは忘れてしまうか、覚えていても平常心を取り戻し、いつもの現場の雰囲気に戻っていました。

Sさんだけは、落ち着くことなくウロウロと歩き続けていました。特に私のことを心配して、私の後をついて来ては、腕を掴んでどこかへ連れて行こうとしました。

他の介護士たちの手を何度も借りて、Sさんの手を振りほどき続けることになり、この日は研修どころではなくなってしまいました。

この日、私が家に帰ってからもSさんの異常な行動は続き、夜中も眠る様子もなく、結局看護師に安定剤を出してもらい、やっと眠りについたのは明け方だったそうです。

ヘリコプターの音がしていたのはたったの数分だけでした。

それにも関わらず、ここまで大騒ぎになるほど、「戦争で受けた心の傷」は深いのかと考えさせられました。

忘れたくない記憶がある中で、忘れたいほどの辛い経験が、完全に忘れられることなく小さなきっかけで思い出されてしまう。

人間の脳は、とても不思議で残酷です

私たちが介護する高齢者の方たちは、普段は優しく笑顔を絶やさない素敵な人たちです。

しかし、とても辛い経験を持ち、懸命に生き抜いてきた過去と共に今を生きています。

そのことも理解した上で私たちは介護士として、利用して下さる皆さんを受け入れ、守る責任があるのだと思いました。

この記事を書いたのは:姫岡 凜(ひめおか りん)

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