知的障がい者施設で虐待事件が起きました!考えさせられた4つのこと

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今年の4月、私の勤務する事業所で虐待事件が起きました。

臨時職員が利用者さんを骨折させるという、あってはならない事件です。

年度の初めということもあり、我々職員の業務にも様々な弊害が起こりました。

その後、事業所から課せられたことを含め、状況を交えて私が考えたことをお伝えしたいと思います。

(介護×医療のストロークでは、実際にそのお仕事についている現場の職員や業界経験のある方に、記事を書いてもらっています。)

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感情のまま暴行に走った臨時職員

暴力を振るう

Alexas_Fotos / Pixabay

事件が起こったのは4月初旬の深夜でした。

夜勤中の男性臨時職員が、自分の指示に従わない利用者さんを押さえ込み、素手でみぞおちを数回殴打しました。

翌朝、勤務を交代した正規職員が、痛がる利用者さんの胸部を確認したところ、赤いアザができていたそうです。

そして利用者さんから「○○さんにやられた」との証言を得て本人に確認。

暴行した臨時職員は悪びれること無く「やってやった」とばかりの笑顔で暴行を認めたそうです。

いろいろ事情があり詳しくは書けないのですが、笑顔で認めた件を聞いたときには何かゾッとするものを感じました。

数年前に起きた「津久井やまゆり園」の犯人に通じるものがあると思いました。

病院で肋骨が折れていることを確認

 発見した職員はその朝の打ち合わせで上司に報告、同時にナースにも伝え、利用者さんは総合病院へと運ばれました。

検査の結果、肋骨が折れていることが確認され、虐待事案となったわけですが、その時点ではまだ我々一般職員に事実は知らされていませんでした。

しかし虐待事案はあっという間に事業所全体にウワサとして広まりました。

私の耳に入ったのも事件から3日後、○○部署の臨時職員が利用者さんを骨折させたらしい、と。

間もなく、その臨時職員には出勤停止の命が下りました。

それでもまだ、事業所からの正式な発表はありませんでした。

役職者も赴任したばかりの環境

終わらないデスクワーク

その後、1週間ほど経ったでしょうか。

朝の打ち合わせで虐待事案が公にされました。

4月も半ばに差し掛かる頃、施設長をはじめ役職者の入れ替わりもあり、現場は混乱しました。

利用者さんは毎日作業に出掛けるのですが、その日から当面出勤は見合わされました。

我々職員も作業現場に出向くことができず、作業に関する業務が滞りました。

(このしわ寄せは正規職員がGWに出勤しなければならない事態になりました。)

作業を良い気分転換としている利用者さんも多く、2週間近くの保留期間、次第に利用者さんがストレスを溜めていくのがわかりました。

その間、直属の上司である部課長は、毎日遅くまでデスクワークに追われていました。

上司が業務に追われるのは当然のことですが、日常的な書類の戻りが遅れたりもしました。

様々な業務の指示を仰いでもなかなか返答が来なかったが続き、我々一般職員も不自由な思いをしました

また、事業所全体がピリピリムードに包まれていました。

普段くだけた会話をしている利用者さんに対して、妙によそよそしい敬語を使ったりして、職員のペースは完全に狂ってしまいました。

自治体や振興局から調査が入る

5月に入りGWが終わると、自治体や振興局の調査が入りました。

ピリピリムードはさらに加速し、現場で強い口調で利用者さんに指示を出している職員は、上司から口頭でたびたび注意を受けるようになりました。

(しかしそれが本来の支援のあり方だと思うのですが・・・。)

あからさまに「やりにくいよね」などと言う職員もいました。

自治体や振興局のスーツの集団を前に、職員の言葉数は極端に減り、戦々恐々としていました。

普段からやましいことがなければこんなに気を遣うこともいらないだろう、と私は感じていました。

報道されたのは2ヶ月以上経ってから

 職員も利用者さんも日常を取り戻しつつあった6月の半ば過ぎ、総務課からこんな指示が出ました。

「敷地内で報道陣に質問をされたら、個人的見解は絶対に述べずに、丁寧に”総務課にお尋ねください”と対応すること。」

いわゆる箝口令(かんこうれい)が敷かれた、ということです。

「報道陣」という言葉が上から出たことで、我々も「あ~いよいよ報道されるのか」とざわめきたちました。

そして間もなく、テレビ各局のニュース番組でこの事件が扱われるのを目にしました。

職員研修の徹底化と施設長の真摯な対応

真摯な対応

7月に入ると短期間に複数の研修が行われました。

勿論、全員参加です。

内容は、今一度虐待について認識を新たにし、過去の事例を皆でディスカッションする、というものでした。

虐待研修は、実は毎年職員に対して行われています。

が、講師もただ資料を読み上げるだけで建前研修なのが見え見えでした。

しかし今回ばかりは職員も真剣に考え、事例を「自分だったらどう対応するか」、我が身に置き換え職員同士で話し合いができたと思います。

また、今年度赴任してきた新しい施設長は、今回の事件を重く受け止め、毎週「思うこと」を私達に発信してくれています。

虐待についてのみならず、人との関わりとは、正しさとは何か、持論をかますというよりも我々に投げかけるスタンスの文書でした。

ある号には最後に「お願いします。」という文言がありました。

上から物を言うのではなく、施設長が我々に深々と頭を下げている姿が浮かびました。

今回の事件で強く感じたこと4点

 以上が私の事業所で起きた虐待事件の概要です。

この仕事に就いてから初めて経験したことですが、この件から学んだこと、感じたことを4つ挙げたいと思います。

1:利用者さんの日課や職員の業務に大きな支障が出る

虐待事件が起こると上司は様々な対応に追われます。

また二次的な事件が起きないよう、利用者さんの日課の遂行にも慎重にならざるを得ません。

その結果、利用者さんの日課は縮小され、それに伴い職員の業務も滞ります。

普段はよしとされていた事柄も、慎重になった上層部からストップが掛かることも多く、利用者さんも職員も何か萎縮している印象を受けました。

時間が経過し、日常を取り戻した時には、一般職員は業務の遅れを取り戻すべく、休日返上で働かなくてはならない事態に追い込まれます。

今度は職員が別の意味でピリピリし始めるのです。

結果、必要以上に利用者さんが(陰で)強く叱責されるなど、負のスパイラルが起こります。

二次災害を避けたつもりが、さらに虐待案件を呼び起こすという、まったく笑えない事態に陥る可能性があるのです。

いずれにせよ、一番迷惑を被るのは利用者さんです。

2:研修に追われる、時間外で参加

虐待防止研修が繰り返し行われます。

講師による講演とグループ研修、すでに2回行われました。

皆さんおわかりかと思いますが、現場は慢性的な人手不足です。

1度の研修で何名もの欠員が出ると、業務がまわりません。

研修は数回に分けて行われることとなります。

ユニットの見守りは2名いますが、そのうち1名は休憩中という時間帯に行われました。

このような人手不足状態で研修が行われると、2次的な事故が起きかねないのです。

この業界の「ぬかり」が浮き彫りになるようです。

研修を受ける側も、利用者さんを見守る側も時間外で行っている職員が多くいます。

このような事業所の体質や職員に対する待遇を見直さない限り、虐待の根本的改善には繋がらないのでは?と思いました。

3:報道による周囲への影響

テレビ報道の後、実家の母から突然電話がありました。

「ニュース見たけど大丈夫?」と。

事件の概要を説明したところ内容がわかって安心した様子でした。

ただ、職員が腹を殴り骨折させたという話には大変驚いていました。

他の職員のところにも親族や友人から連絡があったと聞きました。

また、同じ近隣の同業種ではもう悪いウワサが立っているとか。

多くの職員が真面目に働いており、たった一人のおかしな職員のせいでひとまとめ扱われるのはたまったもんじゃないな、と思いました。

 4:今後本気で事業所が虐待防止に努めるのか?

真摯な施設長の下、どれだけ本気で虐待防止に取り組めるのだろうと職員は見守っています。

今後も新たな研修があるでしょうね。

私は人がいる限り、優劣をつけたがる人の心がある限り、虐待はなくならないかもしれない、と悲観的な意見を持っています。

自分の行いに自信が無く、自分のストレスのはけ口を利用者さんに求める職員がまだまだ存在しているのです。

その職員の心に響くような言葉は、決して建前から生じるものではありません。

まとめ

 このような事が起きると、つらい思いをするのは結局利用者さんなのだ、ということを忘れないでいようと思いました。

そして、私たちは普段、誰かに暴行することなどしないで生きています。

当たり前のことです。

それがどうして老人や障がい者を前にすると,気持ちが荒ぶり普段絶対しない言動に出るのか。

ここのところを答えは出なくともひたすら考え続けること。

それが虐待などしない、プロの介護者、支援者への第一歩なのではないのでしょうか。

筆者名:丸 和水

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