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軟膏の知識はありますか?
介護士は看護士と違い利用者様への医療的ケアは基本的に行うことはできませんが、
軟膏の塗布や点眼薬をさす・座薬を入れるなど、一部の医療行為は介護士も行うことが認められています。
中でも介護士が行う頻度が高いのが「軟膏の塗布」だと思います。
軟膏の塗布は内服とは違い、ただ塗るだけでしょ?と、簡単に考えてしまいがちです。
なかには、「何に効く軟膏なのかわからないけれど、利用者様に頼まれたから塗っておこう…。」なんて人もいるのではないでしょうか?
たかが軟膏と思いがちですが、使用方法を誤ると症状を悪化させてしまうこともあります。効能やどんな症状に使用するのかを知っておくことで塗り間違いも未然に防ぐことができます。
(介護×医療のストロークでは、実際にそのお仕事についている現場の職員や業界経験のある方に、記事を書いてもらっています。)
介護士が知っておきたい、よく処方される9種類の軟膏の効果や使用方法についてまとめてみました。
1:【ワセリン】
主成分:白色ワセリン
効能
・皮膚を保護する 効果があります。
乾燥予防や褥瘡・傷口を保護する目的で使用されることが多いです。
白色ワセリンは、鉱物から精製された油で白色ワセリンの不純物を更に精製した物をプロペトと言います。
注意点
ワセリンは油ですので、紫外線を浴びると肌の色素沈着の原因になってしまうこともあるそうなので、使用時は塗布部を良く観察しておきましょう。
2:【ヒルドイドソフト軟膏】
主成分:ヘパリン類似物質
効能
・保湿効果
・血行を良くする
・血行不良による痛みや腫れを軽減する 効果があります。
・しもやけや傷あと、ケロイド
・手荒れや皮膚の乾燥などの症状が見られる時に使用されます。
注意点
ヒルドイドには軟膏の他にクリームとローションがありますが、効能は同じです。塗る場所や範囲によって使い分けられるそうです。
ヒルドイドはワセリンと並んで良く処方される軟膏で、持っている利用者様も多いと思います。
3:【キンダベート軟膏】
主成分:クロベタゾン酪酸エステル
効能
・炎症を抑える
・アレルギーを抑える 効果があります。
ステロイド外用剤で、ステロイドの強さは5段階中下から2番目のmedium(普通)です。
ステロイドの中では作用も副作用が弱めであるため、皮膚が薄い場所や赤ちゃんでも使用することができます。
・アトピー性皮膚炎
・顔や腋、陰部などの湿疹や皮膚炎
・あかみやかゆみ、腫れなどの症状が見られた時に使用されます。
注意点
キンダーベート軟膏はステロイドだとご紹介しましたが、良く耳にするステロイドの強い・弱いは何の強さを表しているのかをご存知ですか?
ステロイドの強弱とは「抗炎症作用と血管収縮機能の強さ」を指すそうで、
- 最も強い(Strongest)
- とても強い(Very Strong)
- 強い(Strong)
- 普通(Medium)
- 弱い(Weak) の5段階に分かれています。
症状や塗る場所によって処方されるステロイド剤が変わります。(皮膚が薄い場所は薬の吸収率も良いため弱め・皮膚が熱い場所は吸収率が悪いため強めなど)
ステロイドは離脱症状がある・肌が黒ずんでしまうなどと心配する方も多いですが、用法と容量を守れば有効ですので正しく使用しましょう。
4:【リンデロンVG軟膏】
主成分:ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩
リンデロンVG軟膏は、ステロイドと抗生物質が組み合わさったお薬です。
ステロイドの強さは5段階中下から3番目のstrong(強い)です。
効能
・炎症を抑える
・細菌の増殖を防ぐ 効果があります。
湿疹や皮膚炎から細菌に感染してしまった又はその可能性がある場合に使用されます。
注意点
皮膚の赤み・かゆみ・腫れに効果がありますが、潰瘍や重度の火傷・凍傷・カビなどの真菌による炎症の場合は、逆に回復が遅れてしまう可能性もあるため使用しません。
5:【ゲンタシン軟膏】
主成分:ゲンタマイシン硫酸塩
効能
ゲンタシン軟膏は抗生物質で
・細菌が増えるのを阻害する
・感染症を改善させる 効果があります。
・傷が化膿してしまった
・傷の化膿を防ぎたい時などに有効のため、褥瘡の処置に使われることもあります。
注意点
ゲンタシンにはアレルギー反応をおこす場合があります。病院で処方されているものですが、何か利用者さんに変化などないか注意し手観察する必要があります。
また、長期間の使用はNGなので医師の指示の元で必要な期間だけ使用します。
6:【マイコスポールクリーム】
主成分:ビホナゾール
効能
・抗真菌作用があり白癬菌などのカビの治療に効果があります。
・水虫
・たむし
・カンジダ症 に処方されます。
注意点
水虫の利用者様のケアを行った際は、自分への感染を防ぐためにもしっかりと手洗いをしておきましょう。
7:【アズノール軟膏】
主成分:ジメチルイソプロピルアズレン
効能
・炎症やアレルギーを抑える
・傷の回復を助ける
アズノールは副作用の心配が比較的少なく、顔や口・陰部・赤ちゃんでも使うことができる軟膏です。
そのため、効果も強くはないので軽い傷などに使用されます。
・湿疹ができてしまった
・オムツでかぶれてしまった
・火傷をしてしまった
・すり傷ができてしまったなどの軽めの皮膚のトラブルの症状に使用されることが多いようです。
注意点
比較的安全と言われている軟膏ですが、認知症の利用者さんなどは誤食などには注意です。
8:【ゲーベンクリーム】
主成分:スルファジアジン銀
効能
・皮膚の潰瘍の細菌増殖を防ぐ
・火傷をしてしまった
・怪我をしてしまった
・手術後の傷跡からの感染予防に使用されます。
注意点
ゲーベンクリームは傷の回復に直接作用するものではなく、2次感染を予防する役割で使用されるお薬です。
介護の現場では褥瘡の傷からの感染を防ぐために使用されることが多いです。
9:【コンベック軟膏】
主成分:ウフェナマート
効能
・炎症を抑える
・痛みを和らげる 効果があります。
・帯状疱疹
・湿疹や皮膚炎などの症状に使用されます。
注意点
コンベック軟膏にはアレルギー反応をおこす場合があります。病院で処方されているものですが、何か利用者さんに変化などないか注意し手観察する必要があります。
軟膏塗布の注意点
高齢者の方は、薬はたくさん塗れば早く良くなると思っている方も多いです。
「もっと塗ってくれ。」「たくさん塗ってくれ。」
と頼まれることもあると思いますが、たくさん塗っても回復が早まることはありません。
必ず使用方法と適量を守るようにしましょう。また、認知症の方は塗布した軟膏を触ってしまい、口や目に入ってしまうような危険性もあります。
薬の塗布中は話題を変えるなどして、上手に気をそらせてみてるなどして、薬が気にならなくなるようにしてみるなどの対策も必要です。
また、軟膏を塗布する際は、感染予防のためにも使い捨てグローブを必ず使うようにして、介護者自身も自分の身をしっかりと守ることも大切です。
軟膏塗布は責任を持って行いましょう
利用者さんの症状に変化が見られた時は、塗り慣れた軟膏であっても看護師や上司に必ず相談し指示を仰ぎましょう。自己判断は禁物です!
軟膏の塗布は介護士が行って良いと認められている行為ですので、しっかりと知識と責任を持って処置できるようにしておきましょう。
この記事を書いたのは
ライター名:翔ママ
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